本記事の概要
この記事で分かること
・ABFの概要と特徴
・層間絶縁膜の市場の魅力
・ABFが先端半導体でのシェアをほぼ独占している理由
・ABFの営業利益率50%超えの理由
本記事では、半導体後工程における重要材料である、ABFについて詳しく紹介します。ABFは味の素が生んだ、パッケージ基板に欠かせない材料です。ABFは驚異的な市場占有率と利益率を誇っており、なぜ他社が市場に入り込めないのか?その理由も探ります。
想定読者
- 半導体後工程について知りたい方
- 半導体材料に興味のある方
- 味の素が半導体材料を作っている理由を知りたい方
ABF(味の素ビルドアップフィルム)とは?半導体後工程の要
「ABF」は、「味の素ビルドアップフィルム」の略で、その名の通り、味の素が作る、ビルドアップ基板用の層間絶縁フィルム材料です(引用1)。ビルドアップ基板は、半導体チップやインターポーザを集積し、電気的に接続するためのものです。「ビルドアップ」基板と呼ばれる所以は、コア材に対して、銅箔やメッキと絶縁膜(≒ ABF)を交互に重ね、多層膜をビルドアップするからです(引用2, 3, 4)。

- 味の素ビルドアップフィルム®の世界
- 誰でもわかるビルドアップ基板の基礎と製造工程
- 半導体パッケージ基板用層間絶縁材料の現状と動向
- 注目が集まる「ガラス基板」の最新動向 ― 半導体の進化には後工程の技術革新が不可欠に
ABFの特徴
ABFはインク式で層間絶縁膜を形成していた1999年に、以下の特徴を持って市場に投入され、瞬く間に拡がり、業界標準材料の地位を確立しました(引用5, 6)。
・フィルム材による、乾燥レス
・高平坦性
・レーザーによる穴あけ加工性の良さ
・銅箔との密着性の良さ
現在は、以下の特性が特に市場に求められています(引用3)が、依然としてABFの優位は揺らぐ様子がありません。
・低誘電損失→エネルギーロスの低減
・低CTE(熱膨張係数)→異種材料を接合するため、熱による変形と破壊を防ぐ
・さらなる加工性の良さ→加工の微細化への対応
5. 電子材料事業説明会における主要Q&A(2019年6月12日開催)
6. 電子材料事業説明会-味の素ファインテクノ(2019)
7. 令和4年度重要技術管理体制強化制度
市場における立ち位置
ABFは市場シェアは98%であり、ほぼ独占しています(引用8)。競合として、住友ベークライトや積水化学が市場に材料を投入しています(引用9, 10)が、参入に苦戦しています。
圧倒的な市場シェアを背景に、ABFの開発と製造を担う、味の素ファインテクノの2024年の決算は、売上高736億円、営業利益385億円でした(引用11)。営業利益率は脅威の50%超えであり、先端半導体になくてはならない製品であると市場に認知されている結果だと言えるでしょう。
先端半導体の需要が伸び、ビルドアップ基板の微細化が進めばABFの売上も伸びていきます。そのため、市場の伸び率であるCAGRは2034年までで8.5%になるとみられており、さらなる事業成長も期待されています(引用12)。
8. 経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン 強靱化支援事業(半導体)について
9. 情報通信材料営業本部のすべての製品
10. 熱硬化型層間絶縁フィルム
11. 味の素ファインテクノ株式会社 第112期決算公告
12. ABF (Ajinomoto Build-up Film) Market
世界シェア98%の衝撃:ABFの市場立ち位置と利益構造
ABFが市場で圧倒的なシェアを確保している理由を考えると、以下の3つが挙げられます(引用13, 14)。
・変革期における市場への一番乗り
・顧客要求に応える製品の継続投入
・強固な特許網
13. 味の素発「半導体材料」成功の秘訣、市場ニーズを先読みしパートナーと共創
14. 味の素グループの 知財戦略を通じた企業価値向上の実現
また、50%超の営業利益率は、「投資のメリハリ」によるものと言えます。ABFの製造の一部(塗工工程)はZACROSへの外注に頼っています(引用15, 16)。この施策により、設備投資を抑制しています。製造工程全てを外注するのではなく、塗工前のワニス製造は自社で抱え、スマート化を含めた積極的な投資を行う方針が見えます。このことから、ABFのコアはワニスにあり、ワニスに対する積極的な投資し、コアではない塗工に自社のリソースを割かない方針が明確です(引用16)。

15. 藤森工業株式会社、約130億円の設備投資で電子部材事業を強化
16. ABFを軸にした成長戦略
今後の展望: ABFの地盤を崩すメーカーは現れるのか?
現状、ABFの業界内の地位は盤石であり、AI半導体の伸びに比例した事業成長が期待できます。市場への参入を狙う住友ベークライトや積水化学も積極的な投資の様子は見られず、しばらくはABFの独壇場が続くと見られます。
一方で、市場の伸びも期待できる材料であるため、日系以外のメーカーが市場を狙っている可能性があります。今後、ABFの牙城が崩れるのか?注目が集まります。
半導体パッケージの概要も解説しているので、ぜひこちらも御覧ください!


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