設備投資の罠:技術的に十分だけでは不十分!会計リスクを徹底解説

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本記事の概要と想定読者

本記事では、エンジニアが主導して設備投資を行う際に漏れやすい項目について説明します。先日、少し大きめ(数千万円)の設備投資を担当する機会がありました。そのときに気づいた(指摘された)事項が、おそらくエンジニアならたいてい見逃しがちなものだったので、自戒も込めて共有します。

本記事は、以下のような方々を想定して書いています。

  • 製造業のエンジニア
  • 設備投資に関わる方
  • その他、設備投資と会計上のリスクの関係について知りたい方

設備投資で気にすべきこと:技術的十分性は判断材料の一つ

設備投資の経験とそこから得た問題意識

1年ほど前に設備投資を担当することになり、つい先日決裁と発注が下りました。数千万円規模の投資判断ですが、相当に時間がかかってしまった経験から、装置一つ入れるにも、想像以上に多くの項目について問題ないか確認しなければならないことが分かりました。その中でも、特にエンジニアが見逃しがちかつ軽視しがちなポイントがあると思いました。

設備投資で意識すべきリスク

設備投資において、エンジニアは会計リスクを見落としがちです。エンジニアがまず気にするのは、「求められる機能満たすかどうか?」になると思います。それ以外の要素は軽視しがちです。ですが、設備投資において、機能が十分かどうかは、判断材料の一つでしかありありません。まずここがポイントです。機能があくまで判断材料の一つということを踏まえて、投資のための判断材料をリストにすると、代表的なものは以下になります。

  • 性能(スループット、生産物のばらつきなど)が十分か
  • 装置を導入するためのユーティリティー(水、電気、重量、ガス、排気など)が確保出来るか
  • 稼働した際の排出物(排水、廃液、その他ごみ)を処理可能か
  • 近隣施設への公害リスクは問題ないレベルか
  • 法令は遵守出来るか
  • 予算を超過していないか
  • 会計上のリスクは許容範囲内か

性能やユーティリティ、法令などのリスクは想像しやすいと思います。ですが、最後の会計上のリスクはなんとなく分かっているようで分かっていない、あるいは見落としがちです。当時の私も、「設備投資で会計上のリスクまでエンジニアが考えるのか?」と指摘を受けてもよくわかりませんでした。ですが、会計上のリスクを考慮することは非常に重要です。投資は利益を上げるために行う行為であり、意思決定を行う経営層は損益に最大の関心があります。そのため、設備投資担当も、エンジニアとしてだけでなく、経営層としての視点を持って判断する必要があります。

以下では、最重要とも言える設備投資における会計上のリスクについて説明します。

エンジニアが見逃しがちな会計リスク:投資回収と減損

投資回収リスク:回収期間と利益貢献の重要性

まずは投資回収リスクです。これは非常にわかりやすいと思います。「設備Aを導入することに依って、X年で投資金額Yを回収し、以降Z円/年の利益貢献が出来ます。なので、設備Aを導入します。」と言う話です。設備を導入すると、現金が一気に減り、その後減価償却で少なからず利益が目減りします。どの程度の期間で投資を回収可能か?回収後の利益貢献はどの程度か?は常に意識する必要があります。

減価償却とは?基本をわかりやすく解説

減価償却とは、「資産を購入した際、購入した年(月)に一息で損益に組み入れず、何年かに小分けにして計上する」ことです。PCや機械は、買った年に使い切らず、何年か使ったあとに型落ちや修理不能になって買い替えます。何年かかけて徐々に使い切って行く様子を、会計の世界で表現するため、減価償却をして、毎年少しずつ購入した金額の一部を帳簿に載せるわけです。

より詳しい解説は、以下のマネーフォファード様の記事を御覧ください!

減価償却のしくみとは?減価償却費計算や仕訳を基本から解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード
企業経営者の方や個人事業主の方が、会計処理をする際に大切となることのひとつに減価償却があります。今回は、減価償却費を正しく理解するために重要となるポイントを解説していきます。

減損リスク:投資失敗がもたらす巨額損失

投資回収リスクのほか、減損の可能性も考慮する必要があります。減損というのは、「帳簿上に乗っている価値よりも、実際は価値が低いから、帳簿の価値から実際の価値を引いた分だけ、損失として計上する」処理のことです。要は、投資に失敗したから失敗した分を損として勘定するということです。設備投資の場合、投資回収の想定を下回った場合に減損をすることになります。設備投資で一番怖いのは、この減損のリスクです。数千万~数十億の相当大きな金額が一気に損金として計上されるため、赤字転落も覚悟しなくてはいけません。直近の事例だと、日産が4670億円の巨額の減損を計上し、大きな赤字に転落しています。過剰な生産設備を抱えることは、非常な大きな課題になりうる事例と言えます。

日産自動車[7201]:減損損失の計上に関するお知らせ 2025年5月13日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞
2025年5月13日 日産自動車の開示資料「減損損失の計上に関するお知らせ」 が閲覧できます。資料はPDFでダウンロードできます

このように、設備投資は会計上のリスクを相当負っているという事実を踏まえて意思決定する必要があります。減損会計に関する詳細は、野村総研様の以下の記事を御覧ください。

減損会計
野村総合研究所(NRI)の公式ホームページです。NRIからの提言や調査・レポート、商品サービス、ITソリューション事例、IR情報、採用情報、CSR情報などを掲載しています。

まとめ:設備投資は慎重に。会計リスクも意識

以上、設備投資をエンジニアが担当するときの注意点について書きました。

  • 設備投資は設備が要求性能を満たすだけでは不十分
  • 性能のほか、ユーティリティ、公害、法令そして会計上のリスクに対処する必要がある
  • 会計上のリスクは投資回収と減損が主
  • 特に減損は、数千万円以上の大きな金額が一気に損益として計上されるため、赤字のリスクあり

今後も、製造業に関わるエンジニアのためになるような記事を中心に書いていきますので、期待して待っていてください!要望などあればコメントからぜひお願いします!

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