製造業DXの成功事例:デジタル化で解決した現場トラブル
ある工場で発生していたトラブルを、無料ツールとデータ分析を活用して解決しました。製造ラインのデジタル化(DX)により、1ヶ月で最終歩留まりを10%向上、年間の収益で1400万円の改善を達成しました。本記事では、製造業におけるデジタル化の成功事例をもとに、具体的なプロセスや手法をご紹介します。
守秘義務の都合上、一部抽象的な表現になる点はご了承ください。
問題の背景:条件が同じなのに歩留まりが安定しない理由
対象となったのは、半導体関連の部材を製造する某メーカーの工場Aです。この工場では以下の工程で製品を製造しています:
- プロセスA(素材の生産)
- 簡易検査(素材の品質チェック)
- プロセスB(製品化)
- 本検査と出荷
プロセスAから簡易検査までは約3日、プロセスBには約2ヶ月かかるため、リードタイムが非常に長いのが特徴です。このため、プロセスAでの不良発生を防ぐことが重要視されていました。
しかし、工場Aでは長年、条件が同じはずなのに歩留まりが安定しないという問題を抱えていました。突発的な不良が頻発し、最終的な歩留まりが半減することもある状況でした。受注生産であったこともあり、突発的な不良によってデリバリーが遅れるリスクがあったため、余分な在庫を持つ必要もありました。
特に問題視されたのは、プロセスA後の簡易検査で合格した製品が、プロセスBで不良品になるケースです。当初はプロセスBに原因があると考えられていましたが、原因が見つからず、次第にプロセスAの条件に問題がある可能性が浮上しました。
データ分析の活用:無料ツールで見つけた改善のヒント
簡易検査の規格を精査
当時の担当エンジニアも解決を目指したものの、生産中の温度や圧力などのパラメーターは良品と不良品の間で違いが見られず、改善が行き詰まっていました。2年間取り組んだものの、異動となり、引き継ぎを受けた新任エンジニア(私)がプロセスAと残された課題に取り組むことになりました。
私はまず簡易検査の規格を精査しました。合格なのに不良が出るのではなく、本来不合格にすべきものを合格にしているのでは?と考えたためです。
調べたところ、簡易検査は過去2年間、規格が見直されておらず、根拠は4点プロットという限られたデータに基づいていたため、やはり簡易検査の基準に問題があるのではないか?と考えました。
データの統合と分析
次に、簡易検査と本検査の相関を確認しようとしたところ、データが統合されておらず、日常的にデータを確認出来ない状態で有ることに気づきました。そのため、データの統合を進めました。簡易検査と本検査のデータ形式が不適切だったため、PythonのPandasライブラリとExcelを用いて整備し、簡易検査と本検査の相関を改めて取り直しました。その結果、以下が判明しました:
- 本検査で重要視される特性の1つが簡易検査で正確に予測できていない(相関係数0.3)。
- 簡易検査で取得されていた参考項目が本検査の特性と相関係数0.6で関係していた。
応急処置:規格の見直し
この分析を基に、簡易検査の合否判定に新たな指標を追加する応急処置を導入しました。この対策により、突発的な不良がほぼ防げるようになり、1ヶ月で歩留まりの安定化を実現しました。
根本原因の特定:製造プロセスの新たな管理指標
応急処置後、次は根本原因の解明を進めました。本検査の結果をよく予測できた簡易検査の項目は、本検査の結果と直接関連していないと考えられていたパラメーターでした。そのため、実は関係が無いのに、2つのパラメーターをつなぐ第三の要素があるために良い相関を得られる、いわゆる偽相関の関係を疑いました。
データだけでなく、製品の原理から見直した結果、製品に特徴的な「ある層」の特性が問題である可能性が浮上しました。そこで実験を行ったところ、この層は電気的特性に加え、本検査の特性にも影響を与えることが確認されました。この層の特性を管理値として設定し、製造条件を明確化することで根本的な対策を講じました。
DXの成果:10%の歩留まり改善と収益向上
今回の取り組みにより、歩留まりの改善を含む以下の成果を達成しました:
- 歩留まりの向上:最終歩留まりが10%改善。
- 収益改善:年間1,400万円の増収を達成。
- 部門間の連携強化:プロセスAとBのデータ共有が進み、エンジニア間の連携が強化。
- 品質の向上:トレーサビリティが向上し、さらなる品質安定化が実現。
特に、部門間の連携の高まりによって、プロセス間の情報共有が飛躍的に進みました。生産ラインが一体となった改善を進める体制が整い、生産性の改善速度が向上したため、品質と収益両面で大きな効果を得られました。
DXは製造業の未来を変える一歩!
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、難しそうに思えるかもしれませんが、実際には無料ツールや初歩的なプログラミングを活用することで手軽に始められます。本記事で紹介したようなデータ分析や歩留まり改善のプロセスは、現場の問題解決に大きな力を発揮します。
たとえば、Pythonを使ったデータ分析も、ChatGPTのような生成AIを活用すれば初心者でも簡単に始められます。少しの工夫と行動で、大きな変革をもたらすことが可能です。
次回予告:具体的なコーディング例とDXの進め方を解説
次回の記事では、Pythonを用いた具体的なコーディング例や、DXを成功させるための進め方について詳しく解説します。ぜひお楽しみに!
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