化学メーカーは本当にホワイト高年収?実力主義化×インフレで年収の“実質価値”が下がる理由【2026】

化学産業
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本記事の概要

【この記事のハイライト】

  • 筆者属性: 31歳、化学メーカー勤務、課長補佐(入社6年目)
  • 経済状況: 年収800万円、金融資産2,300万円
  • 昇格制度の変化: 従来の「一律昇格」から「選別型」へ。最大4年以上の昇格遅延が発生。
  • 購買力分析: 直近30年で物価は約1.16倍。現在の1000万円の価値は、1995年比で約860万円に相当。

「31歳、年収800万円、金融資産2300万円。」

化学メーカーに勤めるJTC(伝統的日本企業)の会社員として、この数字だけを見れば「順風満帆」に見えるかもしれません。事実、近年の急激な賃上げの波に乗り、私の年収もここ2年で100万円単位のブーストがかかりました。

しかし、その数字の裏側で、JTCの伝統的な「ゆるふわ」な風景は音を立てて崩れ去ろうとしています。

加速する実力主義による昇格格差、そして猛威を振るうインフレ——。実は、今の「1000万円」で買える豊かさは、30年前の「860万円」と同等でしかありません。

本記事では、化学メーカーの中の人である私が、自身の給与・資産形成のリアルを公開するとともに、これからJTCを生き抜くために知っておくべき「残酷な変化」について詳しく解説します。あくまでイチ個人、イチ企業の事例の紹介に留まるため、その点ご留意ください。

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想定読者

  • 化学メーカーの給与体系に興味のある方
  • 化学メーカーに興味のある就活生
  • 賃上げやインフレの影響を知りたい方
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【リアル公開】31歳・化学メーカー課長補佐の年収と資産2300万円の内訳

工場の課長補佐の年収の推移: 6年目で年収800万円

まずは工場の課長補佐(= 私)の年収推移と年収の変動に関わる変化点を示します。賃上げも相まり、順調に年収が上昇しました。入社6年で年収約800万円です。なお、福利厚生分が年額約10万円ほど入っています。残業代と昇格によりけりですが、修士卒の入社6年目だと、弊社なら600~900万円のレンジに収まります。筆者の観測では中心は700万円前後です。

工場の課長補佐(=私)の年収推移の詳細。「残業時間」は月あたりの平均値。

工場の課長補佐の金融資産: 6年で2300万円突破

私の資産形成の状況は以下になっています。現時点で金融資産が2300万円程度です。社会人に成ってから資産形成を始めたため、平均400万円/年で積み上げている状況です。収支で振り返ると、貯蓄の寄与は平均290万円/年だったため、投資による寄与が600万円程度あります。

工場の課長補佐(=私)の資産額。株高の恩恵を大いに受けている事がわかる。

1~3年目の収支に対して、貯蓄額が過大に見えますが、かなり切り詰めた生活をしていたというのが事実です。200万円/年くらいのペースで貯蓄に回していました。

工場の課長補佐の月ごとの標準的な収支

私の標準的な月の収支は以下になっています。「散髪高すぎじゃね?」「趣味や外出に使いすぎじゃね?」など意見はあると思いますが、だいたい毎月こんな感じです。収入アップとともに遊興費が3万円ほど上がってしまいましたが、毎月の支出は15万円程度を目安にしています。

現状の投資は15万円/月のほか、天引きで持ち株1万円/月、配当の再投資1万円/月を継続しています。住居費がないのは、寮に住んでいて天引きされているためです。寮費は1.1万円/月です。寮や家賃補助は、転勤後3年で期限切れになります。実は入社時点だと寮は10年間利用できました。人事制度の改定で期限が3年に短縮されています。

住居費は非常に重要で、もし8万円/月程度を6年間払い続けていたら、私の資産は預貯金だけで500万円少なかったでしょう。投資に回せていなかったことを想定すると、650万円程度の損失になっていました。

賞与は基本給の4~6ヶ月分、全社業績と年一回の個人評定(5段階)で決まります。個人業績分の寄与は賞与の2~3割くらいです。賞与の半額は投資、残りは好きに使って良いとしています。

予算
収入320000
投資150000
固定費積立13000
車関連積立(保険など)16000
旅行積立10000
平日昼食9000
土日など食事27000
電気5000
ガス4500
灯油5000
水道5000
通信3500
散髪9000
趣味や外出50000
フリーキャッシュ13000
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近年の賃上げのドライバー

「工場の課長補佐の年収推移」で示したグラフから分かる通り、直近2年で収入が100万円/年のペースで上昇しています。非常に急激な上昇の原因は3つあり、

  • 複数回の賃上げ
  • 業績の回復による賞与の上昇
  • 昇格

です。特に目立つのは、賃上げの寄与です。過去数年で見られなかった、急激な賃上げのムーブメントがグラフから見て取れます。では、なぜこのような動きが出てきているのでしょうか?近年の賃上げ傾向のドライバーとして上げられる要素は以下です。

  1. 人材獲得競争
  2. 労働組合からの賃上げ要求
  3. 政府の賃上げ圧力
  4. 人材の流動性の上昇(終身雇用の崩壊)
  5. 企業の収益力の改善

図解すると、以下のような構図になります。雇用環境の変化やインフレの進展により、賃金上昇圧力が高まり、それに応えられる、人材を確保したい大手企業が賃上げを進めています。以下ではそれぞれの要素について解説します。

直近の賃上げの圧力の構造。主に外的圧力により、企業は賃上げをせざるを得ない状況にある。
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化学メーカーの「ゆるふわ」を破壊する2つの残酷な変化

1. 「選別型昇格」の導入:普通に働くと昇格が4年遅れる時代

終身雇用の本格的な崩壊や人材の獲得競争とともに、いわゆるJTCである弊社も実力主義化の波が来ています。

弊社で顕著なのは、昇格タイミングの遅れです。大卒と院卒限定の話ですが、過去は初回の昇格後、3年経過すれば次の昇格のチャンスが年1回ありました。受験機会は3回あり、3回目の試験でほとんど誰でも昇格していたと伝え聞いています。

ですが、昨今の人事制度の改革で、この2度目の昇格チャンスが2パターンに分かれました。

  1. 早上がりパターン・・・30代前半のうちに1回受験可。合格したら昇格
  2. 普通パターン・・・1回目の昇格から10年経過で上司の推薦あれば昇格

これまでは、ほぼ全員がパターン1に近い昇格速度であったのが、改革によって昇格が4年以上、大幅に遅れる事になりました。ついでに年次の個人評価による昇給額が大きく減ったため、多くの若手社員の昇給が遅れる事態になっています。

新卒から2回昇格しないと管理職に上がる資格もないため、その点も加味して、ベアがあっても多くの社員の給与が上がりづらくなっています。

2. 賃上げの罠:ベアを上回る勢いで進む「実質賃金」の下落

「化学メーカーはホワイト」「化学メーカーはゆるふわ」「化学メーカーはワークライフバランス重視する人にオススメ」という言説を聞きますが、本当なのか?これはおそらく過去の話になりつつあります。「JTCの「実力主義化」の影響: 「普通の社員」の冷遇」で解説したように、普通の社員は昇給しづらい構造になりつつあります。

4年の昇格遅れで、(昇給分3万円)*(12ヶ月+賞与5ヶ月分)=50万円/年程度のマイナス、更に管理職への昇格が出来ないことで、年収1000万円程度が上限になるデメリットも生じます。

逆に言うならば、これまでの化学メーカーは、のんびり人並みに働いていれば平社員で年収1000万円を実現できていた、ということです。これが、「化学メーカーはホワイト」の正体です。

「依然として平社員で年収1000万円を達成できるなら、良いじゃん」と思う方もいるかも知れません。しかし、本当にそうなのでしょうか?

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インフレの衝撃:今の年収1000万円、30年前ならいくらの価値?

「年収1000万円」と書くと、結構多い印象を受けます。ですが、果たして本当にそうなのでしょうか?消費者物価指数を元に考えます。政府統計の年度別の総合消費者物価指数(引用1)に公表されている数値を元に1995年比での物価の上昇を図示したのが下のグラフです。1995年から2025年で物価は約1.2倍になっています。1995年に100円で買えたものが、120円になったと考えればわかりやすいと思います。

総務省統計局 消費者物価指数 2020年基準消費者物価指数 より。1995年以降の消費者物価指数の推移。2025年以降は3%/年で推定した値。2020年までほぼ横ばい、以降急激に3%/年程度で上昇している。

単純なインフレだとわかりにくいため、インフレによってどれだけ価値が割り引かれるかを計算してみます。

例えば、年率rのインフレがn年続いた場合の価値 Vfuture​ は、現在価値をVpresentとすると、以下のようになります。

Vfuture = Vpresent/(1+r)n

この式に基づくと、年率3%のインフレが10年続くと、購買力は約25%毀損されます。

消費者物価指数を元に、1000万円の価値を1995年比で見てみます。驚くことに、2025年の1000万円は、1995年の860万円と同等です

総務省統計局 消費者物価指数 2020年基準消費者物価指数 を元に試算。対1995年以降の1000万円の価値。2025年以降は3%/年の下落で推定した値。2020年までほぼ横ばい、以降急激に3%/年程度で急落している。

このデータの面白い点は、2020年頃までは、1000万円の価値がほとんど下がっていなかったことです。直近5年の急激なインフレにより、一気に100万円分の価値が消失しています。1995年から2020年までの25年間の常識が、直近5年で大きく書き換わっているのです。消費税の導入や増額、社会保険やその他税額の上昇を加味すると、可処分所得は更に下がっています。

対2025年比で2035年の推定値を計算します。年率3%の低下のシナリオで計算すると、1000万円は740万円程度の価値になります。弊社で平社員年収1000万円は、実質的な賃金は今と変わらない、下手をすれば今以下になる、という事態が現実味を帯びてきているのです。

  1. 総務省統計局 消費者物価指数 2020年基準消費者物価指数
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2026年以降、化学メーカーで「逃げ切り」は可能なのか?

今回の記事では、私の個人的な懐事情の紹介と、いわゆるJTCの化学メーカーにおける給与体系や賃上げの実態を紹介しました。

  • 平社員でも年収1000万円、これが「化学メーカーはホワイト」の正体
  • 賃上げ圧力は確かに働いていて、ベアもされている。
  • 社内制度の変化で、並の社員の給与が上がりづらくなっている
  • 直近のインフレが続けば、2035年の1000万円は、実質740万円になる
  • 年収1000万円になっても、現状年収800万円なら10年後は実質賃下げ状態

給与が上がりにくくなっている現状を考えるなら、「化学メーカーはホワイト」は過去の話になりつつあると言えます。「普通にしていたら実質賃金が目減りしやすい構造」が現代の常識になりました。ここで私は、資産形成がどうのこうのみたいな話はしません。他人の人生に口出しする権利はないと考えているためです。私が言えることは、「過去と今はハッキリと変わってしまったため、現実を見て一人ひとり対策をしないといけない、ということです。」

以上はあくまで個人の事例であり、結果を保証するものではありません。

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