この記事では、IATF16949で要求されるMSA(測定システム解析)の5つの評価(偏り、直線性、安定性、GR&R)について、初心者にもわかりやすく解説します。各評価の目的や意味を簡潔にまとめ、なぜこれらが重要なのかを説明します。参考文献として『岩波好夫(2017) 図解IATF16949 よくわかるコアツール-APQP・PPAP・FMEA・SPC・MSA-』を使用しています。
MSA(測定システム解析)とは?
MSAの5つの評価
MSAは、測定に関わる要因(測定器、測定者、環境など)を総合的に評価し、測定システムがどれだけ正確に測定できるかを確認する手法です。IATF16949では、品質管理の一環として重要な役割を果たします。測定の信頼性を確保するため、以下の5つの評価を行います。
- 偏り
- 直線性
- 安定性
- GR&R(GRR、繰り返し性と再現性)
それぞれが何を評価しているのかは、後述します。
そもそもIATF16949とは?
IATF16949とは、自動車産業の品質マネジメントシステム規格です。似たものにISO9001がありますが、IATF16949のほうがより厳格な規格となっています。完成車メーカーや、いわゆるTier1メーカーに製品を納入するためにはISO9001ではなく、IATF16949の認可が必要になります。詳しくは、日本品質保証機構のホームページなどを参照してください。
MSAの5つの評価方法のそれぞれの意味
偏り
偏りは、1つの基準値(あるいは真の値)に対する、測定の平均値のズレを言います。測定の仕方に癖がないか、あるいは測定器そのものの校正に問題がないかを判断するために実施します。
直線性
直線性は、先に説明した偏りの拡大版だと考えてください。偏りの評価では、1つの基準値に対して、装置や測定の癖を評価しました。直線性は、1つの基準値だけでなく、複数の基準値で偏りの評価を実施します。そうすることで、測定する値の範囲全体での装置や測定器の癖を把握することができます。小さな値や大きな値でブレなく評価出来ているか?を見るという意味です。
安定性
安定性は、時間が経っても測定器が変わらずに同じ測定結果を出すことができるかを評価します。一人の測定者が、1つのサンプルを、複数日にわたって繰り返し測定を行うことで評価を行います。
GR&R(繰り返し性と再現性)
最後は繰り返し性と再現性を評価するための、GR&R(Gauge Repeatability and Reproducibility)です。GRRやゲージR&Rと表現されることもあります。いずれも同じ意味です。MSAの中では、GR&Rが最も頻繁に議論される印象があり、MSAは知らなくてもGR&Rは知っているという人も多いかもしれません。
繰り返し性とは、一人の測定者が、同一サンプルの、同一特性を、同じ測定器を使って、複数回評価したときの測定値の変動を指します。
一方、再現性とは、異なる測定者が、同一サンプルの、同一特性を、同じ測定器を使って、複数回評価したときの、各測定者ごとの測定値の平均の変動を指します。
どちらかというと、繰返し性は個人の力量を見ているようなイメージです。再現性は測定器の正確さを見ていると思うと良いと思います。
まとめ
以上、MSAの5つの評価について概要をざっくり解説しました。
- 偏りは基準値との測定値とのズレの傾向を見る
- 直線性は、偏りを複数の値で評価して、測定範囲全体のズレを評価する
- 安定性は、測定器が経時変化しないか見る
- GR&Rは繰り返し性で人の力量を、再現性で測定器の正確さを評価
今回はMSAの5つの評価の概要を解説しました。今後は、各評価方法の具体的な手順や事例を深掘りする記事を予定しています。品質管理に興味のある方は、ぜひ次回の記事もチェックしてください!
コメント