はじめに: 記事の概要と対象読者
本記事では、以前の記事で概要を説明した、MSA(測定システム解析)の安定性分析について、初心者向けに概要と実践方法を詳しく解説します。この記事を読むことで、安定性の評価の目的と実施方法を理解することが出来ます。前回の記事で、MSAの偏りの分析方法を紹介しているので、そちらもぜひご一読ください。本記事は産総研とアイアール技術者教育研究所の資料を参考にしています。
MSAの安定性分析重要性と評価方法
安定性評価の概要と意味
以前の記事でも解説しましたが、安定性は、時間が経っても測定器が変わらずに同じ測定結果を出すことができるかを評価します。一人の測定者が、1つのサンプルを、複数日にわたって繰り返し測定を行うことで評価を行います。

安定性評価の具体的な方法
安定性の評価を実施するには、以下のリストに挙げたものを用意します。
- 測定器
- 標準サンプル(1つ)
- 測定者(1名)
測定方法
測定方法は以下です。
- 用意した標準サンプルを3~5回/日測定を実施します。測定者は1名です。
- 測定者を変えず、複数日に渡って上記1を20回繰り返します。
測定者とサンプルを変えないことで、測定器のばらつき(偏り)と日々の測定環境(温度や湿度など)の変動に注目する点が特徴です。
測定結果の分析方法:管理図と異常判定ルール
測定結果はX-R(クロスバー-アール)図を用いて評価します。クロスバー管理図は、測定全体の平均値を中心に、管理上限と下限をクロスバー-アール管理図用係数表(既存のものがあるので、それを使用)のA2と3~5回の測定セットごとの最大-最小値の平均(Rダブルバー)をかけたものを中心から足し引きして作成します。
一方、R管理図は、Rダブルバーを中心に、上下限をクロスバー-アール管理図用係数表のD4にアールダブルバーをかけて、中心に対し足し引きした値として作成します。
ここで作った、クロスバー-アール管理図に繰り返し測定した結果(クロスバー管理図なら測定セットごとの平均、R管理図なら測定セットごとの最大-最小の差)をプロットします。プロットした結果をIATF16949で定められた異常判定ルールに則り評価します。異常判定は、例えば測定点が管理図の上下限を超えてしまっている場合や、7点連続して測定セットの平均や最大-最小の差が管理図の中心に対して上or下側に偏っている場合などがあります。
まとめ
今回はMSAの安定性に関する評価について解説しました。
- 安定性は、測定器や測定環境の日々の変動が評価結果に与える影響を調べる。
- 安定性の評価は、同一サンプルの3~5回の繰り返し測定を20回に分けて行う。
- 測定結果の分析は、X-R(クロスバー – アール)管理図と管理図表、異常判定ルールに則り実施する。
今後は直線性やGR&Rの解説も実施するのでブログの更新をお待ち下さい
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