根回しの真実:なぜ「ムダ」に見えるプロセスが最短の成果を生むのか
本記事では、大企業の悪癖として語られがちな「根回し」について解説します。根回しが必要な理由と効果、そして根回しがムダだと言われがちな理由を、大手化学メーカー7年目、実際に4000万円の設備投資を3か月で通し、その他様々な提案と根回しをしてきた筆者が解説します。
想定読者
- 根回しの本質を知りたい方
- これから大企業に在籍する、あるいはしている若手の社会人
根回しの定義:単なる「ご機嫌伺い」ではない
「根回し」の定義について改めて。「根回し」は、「提案を議題として会議に上げる前に、事前に関係者に告知し、一人ずつ了承を得ておくこと」です。新人の頃、先輩や上司に「今度の提案、〇〇部長に根回しした?」とよく聞かれました。当時の私は、「提案なんて、会議に上げてその場で合意取れば良いのでは?」と思っていたため、根回しをする理由がよくわからず、納得いかないまま関係者に声がけしたり、時には根回しせず会議に提案を持っていったりしていました。結果として、決定者に困惑され、判断を有耶無耶にされた挙句、Goの判断が出た後も実行フェーズで上手くいかず、空中分解した経験もあります。
様々提案する中で、根回しの有無は間違いなく提案の勝率(提案の通りやすさやその後の成功率の高さ)に関わることが経験的に分かってきました。根回しをしなかった場合、提案が通ったとしても議題に上げた後に関係者との調整が難航するケースも多くありました。今回は、経験を通して見えてきた根回しの理由や効果について解説します。
実体験から判明した「根回しの有無」が勝率を分ける理由

そもそも、根回しが必要な理由が明確にあります。私見では主な理由は4つあり、
- 関係者、特に決定や実働のキーマンを選定するため
- 提案内容を完成度を上げるため
- 提案の決定者に判断する猶予を与えるため(考えて判断したと錯覚させるため)
- 上記1~3を会議の前に済ませることで、納得感を持って決定と実行に移れること
そもそも論で言うと、会議は決定の場です。そして、決定の場でいきなり議論と判断の必要な提案を受けても、多くの場合その場で決定は出来ません。そのため、根回しが必要になります。個人の頭の中や生成AIとの壁打ちだけで考えた提案は、多くの場合独りよがりになります。一人で実行出来る提案は、そもそも議論せず即実行すれば良いだけなので、議論を要するということは自ずと人を巻き込むことになります。人を巻き込むなら、巻き込まれる人たちの意見を入れるほうが納得感と完成度、実行可能性が高まるのも必然です。
実際、私が開発エンジニアとして製造装置の改善を進めていたとき、生産で使っている装置を改造する必要が生じました。このとき、製造主任に対して目的と効果、やりたいことを丁寧に説明した結果、積極的に実験を手伝ってくれただけでなく、さらなる改善の提案や製造部長への根回しも進めてくれるようになりました。これが根回しの効果です。
意外と重要なのは、3の「決定者に猶予を与える」です。決定者が提案の責任を負う形になるため、「会議→その場で決定」を迂闊に出来ません。そのため、決定するための場(会議)までに猶予を与えるべきです。また、よく考えて決定したという印象を持ってもらうことで、提案に対するコミットメントも上がります。
一方で、不意打ち的に提案して、その場で決定を下すよう迫るやり方が有効な場合もあります。これは、熟考の時間を与えると突っぱねられる可能性の高い提案を行う際に有効です。あまりやりすぎると、信頼関係にヒビを入れる懸念もあるため、奥の手と考えるべきでしょう。
なぜ「根回し不要論」が生まれるのか?その誤解と例外
では、なぜ根回しがムダと言われることがあるのでしょうか?根回しには様々な効能がありますが、以下のようなケースでは根回しは無駄になるだろうと推測できます。
- そもそも実行が単独で可能で関係者がいない or ごく少数。責任も自身で負える範囲
- 単独の責任範囲でしか動いたことが無い、あるいは責任範囲が意識できていない
- 強力なトップダウンが効いた組織に所属している
特に、若手のうちは上記1と2から根回しがムダと断じがちです。多くの場合は根回しが必要にもかかわらず、実行も責任も自身の範囲内に収まると思い込む傾向があるように思います。実際私自身もそうでした。会社組織においては、責任と実行は分けられていることが多いため、特に新人は自身の行動に責任を負えることのほうが少ないと思ったほうが良いでしょう。
また、上記3のようなワンマン社長が率いる強力なトップダウンの中で、トップやその信任を得ている場合も根回し不要でしょう。実際はトップダウンの効いた組織でも、実行役に納得感を持って動いてもらったほうが良いため、個人的には根回しに近い行動はあった方が良いように思います。
まとめ:組織で存在感を出すための「戦略的根回し」のススメ
以上、根回しが必要な理由とその効果、根回し不要論の実態について解説しました。特に若手のうちの「根回しいらないだろう」という自己判断は間違いであることが多いです。組織においては、責任者と実行者が分かれていること、実行者も自分だけではないことあほとんどであることを意識して、関係者を巻き込みながら提案や行動を磨いていくべきです。根回しは提案の成功確率や個人の実力を高め、組織の中で存在感を出すためにも重要な行動のため、面倒がらず丁寧に実施することをおすすめします。





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