はじめに:化学メーカーにおける製造エンジニアとは
本記事では、化学メーカーにおける製造エンジニアの仕事について紹介します。筆者は製造現場でのエンジニア経験を4年程度積んでおり、日常運転のほかラインの立ち上げや装置の更新など、製造のエンジニアとして一通りの経験を積んでいます。
経験がないと想像の難しい、製造現場でのエンジニアの仕事と役割、キャリアについて可能な限り詳しく解説します。なお、本記事はある特定の化学メーカーでの個人的な経験を元にしています。一般的な話ではない点ご了承いただき、参考にしてください。
対象読者(こんな方におすすめ)
- 化学メーカーの技術職に興味のある方
- 化学メーカーの製造現場に配属されたエンジニアの仕事を知りたい方
- 製造エンジニアのキャリアについて知りたい方
製造エンジニアの3つの主な役割と目的

製造エンジニアの目的は「収益の改善」であり、求められるのは「安定生産」と「生産歩留まりの改善」です。主に3つの役割があると言えます。
- 生産ラインの日常運転の中で起こる技術トラブルへの対応
- 製品歩留まりの改善のための条件の調整
- 生産ラインをなるべく止めず、安定生産を続けるための改善
私は、「製造エンジニア」とは、「安定生産と製品歩留まりの改善を目指し、生産ラインで発生するトラブルや不具合への対策を考案・実施する業務を中心に、製造現場で起こる技術的な課題の解決に取り組むエンジニア」と定義しています。私自身も、歩留まりの改善や設備更新で工場に貢献できるよう取り組んでいます。
生産はなるべく同じ条件・環境で生産するものですが、いわゆる4M(人、原料、機械、方法)が微妙に変わることは避けられないこともあり、何かしら不具合が出ます。日々起こるトラブルをエンジニアリングの視点で分析し、対策を実施するのが第一の仕事です。トラブルが発生し続けると、歩留まりや安定生産に支障をきたすため、スピード感や緊張感のある仕事が求められます。
トラブルを起こさず、より良い歩留まりが得られる生産プロセスへの改善も重要な仕事です。トラブルのフィードバックの結果、改善につながることも多いです。安定して長く生産を続け、更に歩留まりを良くするための、設備の改善や更新も製造エンジニアが担います。生産ラインの仕組みをよく理解することも、製造エンジニアの仕事です。
上記の仕事は、一般的に「製造技術」や「生産技術」と言われる業務をひとまとめにしていると言っても良いでしょう。弊社の場合だと、工場内で明確にこれら2職種が分かれていないため、まとめて「製造エンジニア」と呼んでいます。
弊社では、製造エンジニアと別に、インフラや生産設備などの機械周りのメンテや設計を行う業務は、保全やインフラ、設備技術と分類されています。
役割1:トラブル対応と「安定生産」の維持
「安定生産」を目指す理由は、一般的に、生産ラインを止めると再度生産ラインを稼働させるために必要な労力や費用が多くかかるためです。稼働状態の生産ラインは、環境が一定の定常状態にありますが、一度止めると再び定常状態に持っていくために、時間や条件出しの費用がかかってしまいます。生産ラインを止めること自体がコストになるため、生産ラインはなるべく止めないことが好ましいです。

役割2:コスト削減に直結する「歩留まり」の改善
「歩留まり」は「原料の投入量(コスト)に対して取得できる製品の量や数」のことを指します。歩留まりは理論上の上限は100%(原料が全て製品になる)ですが、実際は原料全てが製品になることはありません。一部は廃棄物になったり、規格外品として廃棄されます。「歩留まりが良い」と、コスパよく製品を作れるため、常に「歩留まり100%」を目指して改善するのもエンジニアの仕事です。

実際の歩留まり改善に取り組んだ事例は、以下の記事に挙げています。ぜひご一読ください。
製造エンジニアに求められる・身につくスキル

製造エンジニアとして求められる(習得できる)スキルは多岐に渡ります。汎用的なものと専門的なものに分けると、
汎用スキル
- 即断即決の判断力
- トラブルに対する精神的な耐性
- 課題の発見から応急対策の立案・実行までの速さ
- 製造業におけるコスト構造の理解
- ISOなどの認証資格の仕組みの理解
- 部署横断のコミュニケーション能力
専門スキル:
- 生産プロセスの理解と運用
- プロセスを構成する装置の理解と運用
- 扱う材料の効能や危険性の理解
- プロセスや材料を扱う上での関連法令の理解
仕事の目的が「収益の改善」となるため、製造業がどうやって稼いでいるのか?を肌で感じられる点はキャリアにプラスとなります。装置の投資に関わることがあれば、装置の立ち上げに伴ってプロセスの深い理解が得られるだけでなく、投資回収がどのように試算されるか?減価償却とは?という管理会計に関わる知識も深まります。また、トラブルを速やかに解決する機動力や、製造内以外にも品証や営業などと連携するコミュニケーション能力を求められます。
「スピード・コミュニケーション・儲け」この3つの言葉に興味があれば、製造エンジニアとしての適性があるかも知れません。
製造エンジニアからの多様なキャリアパス
気になる製造エンジニアのキャリアですが、多岐にわたります。主たるものを挙げると、
- 製造現場で昇進し、工場の管理職を目指す
- 品質保証部門へ異動
- プロセスの知識を活かして、技術営業にキャリアチェンジ
- 材料の知識を活かした購買部門での活躍
- 設備のプロフェッショナルになるべく、設備技術エンジニアになる
- 量産を担った経験を活かして製品開発へ異動

あまり見られないのは、製造エンジニアからの研究職への異動です。個人的には量産できるか?を考えながら研究をできる視点は、企業の研究職として強力だと思うのですが、弊社だとほとんど見かけた事がありません。
まとめ:ビジネスの最前線で「稼ぐ力」を学べる魅力的な職種
以上、化学メーカーにおける製造エンジニアの仕事の紹介でした。製造エンジニアは収益の改善を目指して、安定生産と歩留まりの改善を担っています。日々起こるトラブルを解決するためのスピード感や、部内だけでなく関係する部署との連携を求められる職種でもあります。製造業のビジネスの最前線を担う仕事のため、製造業そのものの儲けの仕組みを深く理解できる仕事です。
最前線で戦う必要があるため、トラブル発生時は時間問わず対応を求められるケースもあります。実際、私も土日の呼び出しや深夜の電話はありましたが、非常に稀です。
かなり稀なケースと心得ているものの、私の場合は、生産管理(生産量やスケジュールの調整)や在庫管理(材料の購入量や生産量を調整し、キャッシュフローを最適化する)など、本来管理部門が担う役割も担っており、より儲けの解像度が上がりました。
技術系総合職の中では避けられがちな仕事の一つですが、スピード感やコミュニケーション、儲けの仕組みに興味がある人ならきっと活躍できます。描けるキャリアも様々で、潰しも効きやすいため、オススメの職種です。





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